亜鉛は(zinc)原子番号30の金属元素です。元素記号は「Zn」で必須ミネラル(無機質)16種の一つです。
青味を帯びた銀白色の金属で、湿気で錆び易く、灰白色の塩基性炭酸亜鉛で覆われます。融点は419.5℃、沸点は907℃で常温では脆いが、約110~150℃の範囲のみで展性、延性に富むようになります。
空気中で加熱すると酸化亜鉛となり希酸に容易く水素を発生して溶けるが、希硝酸に溶解させた場合は濃度により亜酸化窒素、窒素、ヒドロキシルアミンあるいはアンモニウムイオンを生成します。
また、両性元素であり、熱濃アルカリにも徐々に溶けます。室温において乾燥状態ではハロゲンと反応しにくいが、水分の存在下では室温でも激しく反応し、硫黄とは高温で硫化物を作ります。一方、水素、炭素および窒素とは高温でも直接は反応しません。
天然では単体で産出することはありますが、資源的に見合う量ではありません。しかし、硫化亜鉛を主成分とする閃亜鉛鉱などが簡単に採掘されるため金属は安価です。その他、亜鉛はウルツ鉱、菱亜鉛鉱などの中にも存在します。
亜鉛は少なくとも紀元前4000年から銅との合金である黄銅(真鍮)として用いられてきました。古代ギリシア人はキプロス産の亜鉛化合物について記述しています。
インドでも12世紀から使用されており、そこから中国に渡り、16世紀には中国でも亜鉛生産が始まっています。
日本では真鍮を意味する鍮石という言葉は天平年間から記録があり、金属亜鉛の製錬は1889年(明治22年)に黒鉱の処理から始まりました。精錬には、乾式法と湿式法とがあります。
人体においては、鉄の次に多い必須元素で、体重70 kgの人に平均2.3 g含まれています。
100種類を超える酵素の活性に関与し、主に酵素の構造形成および維持に必須な成分です。
代謝や遺伝子発現、たんぱく質合成など、細胞の成長と分化に重要な役割を果たしています。
また、男性機能にも不可欠なため「セックスミネラル」と呼ばれることもあります。
亜鉛が欠乏すると、細胞分裂の頻繁な場所に影響が現れます。症状としては、味蕾の減少による味覚障害、精子形成の減少、無月経、貧血、皮膚炎、免疫機能の減弱、甲状腺機能の減弱、傷の治癒の遅延などがあります。
また胃腸機能の減衰、および免疫機能低下による下痢によって亜鉛を含む栄養素の摂取不良を招き、欠乏がさらに悪化することがあります。
亜鉛の欠乏は、亜鉛と結合し小腸での吸収を妨げる食物繊維の取り過ぎ、さらに鉄や銅の過剰摂取などが原因となって起こることがあります。
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効果
亜鉛は、免疫や代謝、DNA、細胞分裂などに関係しています。何らかの効果をもたらすというより、主に、身体が何らかの働きをする際の材料として使用されます。ここでは、その効果の一部を簡単に説明します。
- 酵素の活性化
- 細胞分裂や新陳代謝の向上
- 血糖値の低下
- 生殖機能の改善
- 薄毛予防
- アルコールの分解
- 免疫向上
- 味覚正常効果
- 胎児や子供の健康な成長
体内における多数の酵素の活性化作用
細胞分裂において使用され、それによる代謝の向上効果
糖の代謝に必要なインスリンの生成に必要となる
ホルモンの分泌促進による生殖機能の改善や精子の生成、EDの改善
ホルモンバランスの正常化による男性ホルモン量の正常化
髪の毛の生成、成長に必要とされる
アルコールの代謝、分解に必要とされる
細胞分裂促進による内蔵機能の向上や免疫細胞の働きの強化による免疫の向上効果
味覚細胞の形成に使用され、それによる味覚の正常化
細胞分裂による成長期のたんぱく質の合成や骨、脳の発達に必要とされる
亜鉛の効果は非常に多岐にわたり、これでもほんの一部です。
副作用
亜鉛は多くても少なくても身体には良くありません。ですが毒性の低いミネラルなので、基本的には無害であり、また、体内には余分な分を尿などにより排出する作用があります。
なので過剰摂取しても短期間であればそれほどの心配は要らないと言われています。しかし、長期間の過剰摂取は様々な副作用を引き起こす危険性が高まります。
ただし短期間でも1g~2gという非常に大量に摂取した場合は、急性亜鉛中毒という病気を発症するようです。急性亜鉛中毒の症状は、嘔吐、めまい、発熱、下痢、倦怠感、胃や腎臓の障害、脱水症状などです。
欠乏に関しては、上の「亜鉛とは」に簡単にですが記載していますので、ここでは主に長期的な過剰摂取をした場合の症状ついて記載します。
嘔吐、めまい | 下痢 |
頭痛 | 発熱 |
神経障害 | 肝臓、腎機能障害 |
貧血 | 肌荒れ、抜け毛 |
免疫の低下 | ガン細胞の発生 |
など
ガンに関してですが、亜鉛は体内の活性酸素を抑える活性酸素除去酵素(SOD)の構成要素でもあります。体内の活性酸素が増えると細胞を傷つけてしまうため、肌の老化やガン細胞を生み出す原因となります。
これらの症状の他に、長期の過剰摂取では銅と鉄の吸収を阻害し、吸収率の低下を招くという副作用もあります。銅や鉄も身体に必要不可欠なミネラルです。
亜鉛の銅や鉄の吸収阻害作用によって、間接的にこれらのミネラルの欠乏症を招く恐れがあります。
下の「含まれる主な食品」に詳しく記載していますが、成人での一日の推奨摂取量は約9mg前後です。
日本の精力剤(男性用活力サプリメント)やサプリメントでは、亜鉛の含有量はそこまで多くありませんが、海外のサプリメントなどには大量に含まれている場合があります。なのでサプリメントなどで摂取する場合は、自分の摂取する量を確認するようにしましょう。
含まれる主な食品
亜鉛は、重要な成分にも関わらず体内では一切生成されないため、食事から摂取する必要があります。
日本人はミネラルが少ない土壌で生活しているため、欧米人に比べると体内の亜鉛量が少なめです。そして、一日の摂取量は、日本人男性で20~59歳で平均9mgほど、女性は20~59歳で平均7mgほどです。(平成25年度国民健康・栄養調査より)
おおよそ必要量は満たしていますが、あくまで平均であり、メニューなどにより、毎回の食事で必要量を摂取できているとは限りません。また、亜鉛は体内での吸収率が低く、約30%ほどといわれる成分です。(クエン酸やビタミンCによって吸収率が上がるようです)
そのため、日本人の多くは潜在的亜鉛欠乏症(marginal zinc deficiency)の状態にあるといわれています。
食品別含有量 (100gあたり)
- 牡蠣 約13.2mg
- パルメザンチーズ 約7.3mg
- 煮干 約7.2mg
- ピュアココア 約7.0mg
- 豚肉(レバー) 約6.9mg
- 松の実 約6.0mg
- ゴマ 約5.9mg
- 牛肉(肩ロース) 約5.8mg
- するめ 約5.4mg
- カシューナッツ 約5.4mg
など
肉類は難しいですが、亜鉛は、調理により壊れてしまうことが多いので、生食が有効です。
ちなみに亜鉛は、厚生労働省によって、「推定平均必要量」「推奨摂取量」と「上限量」などが定められている栄養素の一つです。上限量は、「それ以上摂取すると健康被害を引き起こす可能性がある」とされる量です。
厚生労働省による2015年版、日本人の食事摂取基準による亜鉛の目安摂取量(一日における)
- 推定平均必要量
- 推奨量
- 上限量
男性 15~17歳 9mg 18歳以上 8mg
女性 15歳以上 6mg
男性 15~69歳 10mg
女性 12~69歳 8mg
妊婦 10mg
授乳婦 11mg
男性 18~29歳 40mg 30~69歳 45mg
女性 18歳以上 35mg
となっています。
まとめ
亜鉛は、身体の様々なところで、素材として必要とされる栄養素です。しかし、必要量を食品からの摂取で補うのは、意識して摂取しないとなかなか難しく、また吸収率の低さから不足しがちな栄養素です。
最近では男性機能回復効果があるとして有名にはなっていますが、その他にも重要で様々な効果があると言われています。なので、精力などに興味が無い場合でも、意識して摂取したい栄養です。
しかし、摂取量には気をつけましょう。特に、精力回復や精力増強などの目的で摂取する場合、過剰に摂取してしまう場合が多いようです。
摂取すれば、しただけ効果があるというものではなく、逆に、過剰摂取による副作用を発症する場合があるため、摂取量は確認するようにしましょう。
亜鉛の影響とは限りませんが、何らかの症状が出た場合や、心配があるようなら、必ず医師に相談するようにしましょう。