マカ(Maca)は南米ペルーに植生するアブラナ科の多年生植物で、南米では古くから伝われている根菜です。標高約4000m〜5000mのアンデス高地で栽培される高原野菜で、アンデスニンジンとも呼ばれます。根はカブのような膨らんだ形をしており、辛味と甘みを合わせた風味をしています。
別名「macamaca」「maino」「ayak chichira」「ayak willku」ともいいます。属名を「Lepidium」といい、その語源はギリシャ語の「Lepidion」から来ていて、その実の形から、小さな鱗片という意味です。
ペルーでは広くマカと呼ばれている植物はSoukup(1970)によって記録されている物で100種類あり、そのうち11種類がペルーに自生しています。
薬用ハーブや漢方などに使用されており、また健康食品としても親しまれている植物です。アミノ酸、ミネラル、ビタミン、食物繊維などが豊富に含まれている事や、またその栄養バランスが素晴らしいことから「完全食」と呼ばれたりしています。
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栽培
マカは、アンデス高地の標高約4000m〜5000mほどの場所で栽培されており、強烈な紫外線と酸性土壌、ほぼ赤道直下であるため昼夜の温度差の激しい過酷な自然環境で育ちます。
また、栄養を吸収し、貯蔵する能力が非常に高いため、一度マカを栽培し、収穫した土地は、数年間植物の育たない不毛の土地になると言われています。
種まきの時期は10 - 11月、収穫は1年後の6 - 7月、収穫後は3か月以上強烈な太陽光線のもと天日乾燥します。乾燥したマカの根は7年もの年月の貯蔵に耐える為、保存食としても用いられます。
歴史
約2000年もの昔から栽培されており、インカ帝国の時代には特権階級の食べ物として珍重されていました。また、戦いなどで戦果をあげた兵士に、褒賞として与えられていたそうです。
当時の現地では、滋養食として現地の代表的な家畜であるリャマと少量のマカが取引されていました。現在マカは、原産国であるペルー政府の貴重な外貨獲得資源となっており、マカそのもの(生の状態)をペルー国外に持ち出すことは法律で禁止されています。
また、アメリカのNASA(米航空宇宙局)が豊富な栄養素を持つことに注目し、宇宙食として正式にマカを採用したそうです。
日本においては、1990年にペルー政府によって紹介されたのが初めてです。その後、1997年、2001年、2003年に、当時はペルーの日系法人だった会社やテレビで紹介されたことによって一般的に認知されることになりました。
また日本はマカの取引が非常に盛んであり、2003年から2006年にかけて、マカの対輸出国としてアメリカ合衆国についで第2位をキープしています。ペルー国内のマカ輸出商社計120社あまりのうち、約40社が日本と取引を行っています。
その結果現在、日本の薬局・ドラッグストア・通信販売等で多くのマカ加工食品販売されており、非常に身近な食品となっています。
成分
必須栄養素を多く含んでおり、またその栄養バランスが非常に優れています。また他にも大量の必須アミノ酸やオレイン酸といった脂肪酸、ジャガイモの倍以上の鉄分とカルシウムやビタミンB群、ミネラルなども含んでいます。
効果
ここではマカによって期待される主な効果を紹介します。また、その効果のある栄養素の一部も紹介しています。
※1つで様々な効果が期待できる栄養素が多いため説明が重複している場合があります。また、効果には個人差があります。
- ホルモンバランスの正常化
- 生理不順改善、不妊改善
- 冷え症改善
- 疲労回復
- ストレス解消
- 血行促進
- 体力増進
マカに多く含まれるミネラルやアミノ酸によってホルモンバランスを整える効果があると言われています。ミネラルやアミノ酸類は人間の生命活動には欠かせない栄養素です。
アミノ酸であるアルギニンには、成長ホルモンの分泌を促進する働きがあると言われています。
その他にも、精力増強や男性機能の改善効果があると言われています。
また、リジンという受胎効果を高めると言われている必須アミノ酸も含まれています。カルシウムやビタミンEも豊富に含まれていますが、これらもホルモンの分泌や調整にとても有効に働くと言われています。
これは女性の方のみの話になりますが、マカは生理不順や不妊改善に効果があると言われています。生理不順の原因にはストレス、疲労、急激な体重の増減など様々な要因がありますが、それら、もしくはそれ以外の何らかの原因によってホルモンバランスが崩れたために起こる場合があります。
マカにはミネラル、アミノ酸などのホルモンバランスの調整に有効だと言われている物が多く、またホルモンの分泌に有効な物も豊富に含まれています。
ですので、ホルモンバランスの乱れが原因である場合は、マカを摂取することで生理不順の原因の解消に期待ができます。ちなみに各種栄養素による滋養強壮、ホルモンバランスの正常化効果により、生理痛の症状の緩和効果があると言われています。
また、マカに含まれる必須アミノ酸に「リジン」というものがあります。このリジンには受胎効果の向上作用があり、そのため不妊改善に効果があると言われています。
※マカによる不妊改善のメカニズムには、まだ解明されていない部分が多いようです。アメリカなどでは不妊治療に効果があるとして、医師がマカのサプリメントの摂取をすすめる場合があるようですが、逆に日本では医学的根拠がないということで、医師によってはマカの摂取を控えるよう指示する場合もあるようです。
この様に日本と海外では、有効性の評価が異なっているようです。不妊症の原因は人それぞれですし、また自分の体に合う、合わないで、有効かどうかも変わってくると思います。
ですので、過信は禁物だと思います。
また、マカと不妊治療を併用する場合、マカは薬ではないので飲み薬などの不妊治療を受けている場合でも、摂取して問題ないという意見があります。
調べるとそういった情報が結構出てくるのですが、しかし個人的には、不妊治療の方法にもよると思いますし、気をつけるに越したことはありません。
非常に大切な問題なので、不妊治療とマカを併用の際は有効性や治療方法との相性を含め、必ず医師に相談する事をおすすめします。
冷え性の原因としてホルモンバランスや自律神経の乱れなどがありますが、それを改善すると言われている「アルギニン」というアミノ酸がマカには含まれています。
アルギニンには、血管拡張による血行促進効果があり、免疫力の向上効果があると言われています。その他に、ホルモンバランスの正常化やホルモンの分泌を促進すると言われています。これらの効果によって、冷え性の改善が期待できます。
また、アルギニンによって分泌が促進されるホルモンの中の成長ホルモンには、脂肪を燃焼する働きがあると言われています。アルギニンの女性への効果では、コラーゲンの生成を促進したり、肌の保湿効果があると言われています。
マカには豊富にビタミンB1(別名チアミン)が含まれているのですが、そのビタミンB1が疲労回復に効果があると言われています。
ビタミンB1は糖質の代謝(エネルギーに変える)を助けたり、筋肉や神経を正常に保つ働きがあると言われています。人間の体はエネルギーを生み出す時、疲れの元である乳酸を発生させますが、ビタミンB1にはこの乳酸を燃やす働きがあると言われています。
このビタミンB1が不足すると糖質をエネルギーに変えることが出来なくなるため、疲労感や倦怠感、食欲不振などを招きます。
また、脳唯一のエネルギー源である糖質が供給出来なくなるため、イライラや集中力の低下を招くと言われています。水溶性で水に溶けやすいため、調理中での損失が多いため、現代人では必要な摂取量の7割程しか摂取出来ていないと言われています。
マカに含まれるビタミンB群、ビタミンC、カルシウムなどの働きによって、ストレスの解消、ストレスに強い体作りの効果があると言われています。
ビタミンB群には、神経や筋肉、代謝や免疫機能の改善や安定させるものが多く、ビタミンCには抗酸化作用があり老化を防ぐ効果の他に、イライラや不安感を抑制するホルモンの分泌を促す効果があると言われています。
カルシウムは抗ストレス効果があり、抗ストレスホルモンの生成に必須と言われています。ちなみに一般的には、「カルシウム不足=イライラ」と思われていますが、体内の細胞内カルシウム濃度は厳密に管理されており、不足するとカルシウム貯蔵庫である骨から供給されるため、不足したからと言って即イライラするわけではないようです。
現代人の周りには「ストレス社会」と言われるほどストレスが多く、知らず知らずのうちに溜め込んでいる場合が多いのです。これらの栄養素は、水に溶けやすかったり熱に弱かったりするものが多いので、現代人には不足しがちです。
マカには「亜鉛」「アルギニン」などの血行や代謝の改善、促進に効果のあると言われている栄養素が多数含まれています。
主に、代謝の向上には亜鉛、血管の拡張や血流の改善にはアルギニン、ビタミンEなどが有効と言われています。
また、ビタミンB群には、血流に関する臓器や筋肉、神経を正常化する効果のあるものが多いため血行や代謝の改善につながると言われています。さらに、鉄分も含んでいるので貧血にも有効と言われています。
体は筋肉で出来ており、筋肉は筋たんぱく質によって作られています。その筋肉にとって必須であるアミノ酸に「BACC」、別名「分岐鎖アミノ酸」と言うものがあります。
この分岐鎖アミノ酸とは、アミノ酸の「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」の3種類を指します。これらは、筋肉作りに大きく貢献し、また、筋肉の分解を防ぐと言われています。
運動をすると筋たんぱく質が分解されますが、BACCを摂取しているとBACCの分解が高まり、筋たんぱく質の分解が抑制されると言われています。その結果、筋肉の発達や筋肉中におけるエネルギーに余裕が出来、体力の増進につながると言われています。
またロイシンは、膵臓からのインスリン分泌を促進し、インスリンによる筋たんぱく質の合成作用を増大すると言われています。マカにはこのBACCが豊富に含まれると言われています。
副作用
マカは、様々な栄養素がバランスよく豊富に含まれています。そのため、精力増強に、滋養強壮に、またホルモンバランスを整える目的などにマカはよく使用されます。
身体に良い効果を多くもたらすと言われていますが、そんなマカにも副作用があります。
※副作用という言葉は医薬品に対して用いられる為、食品であるマカには不適切かもしれませんがここでは便宜上、副作用と表記します。
マカは野菜のため、一般的には安全で副作用がないと思われているかも知れません。しかしマカは自然食物であると同時に、上記のように身体に様々な効果を与える生薬、漢方としての働きがあると言われています。
そのため、過剰摂取や個人の体質・体調によっては副作用が出てしまう事があります。ここでは、マカの副作用について、症状や摂取を控えたほうが良い場合について記載しています。
- アレルギーのある方
- 肝機能、腎機能
- 下痢
- ニキビ
- 頭痛、不眠
マカはアブラナ科に属する野菜です。そのため、キャベツやブロッコリーなどアブラナ科の野菜に対して食物アレルギー反応を持つ場合、 マカを摂取することによってアレルギー反応が出る場合があります。
症状は一般的な食物アレルギー反応と同様で、腹痛、下痢、嘔吐、喘息、かゆみ、じんましんなどです。その他の、アブラナ科で有名な食物には、キャベツやカイワレダイコン、カブなどがあります。
マカには解毒作用や炭水化物などをエネルギーに変える働きがありますが、過剰摂取により肝臓や腎臓を酷使しすぎて疲労してしまう事があります。
肝機能や腎機能が低下している状態でマカを1日に40g以上摂取するのは危険、という研究結果があるようです。これは、サプリメントなどの説明書に記載された用法用量を守って正しく服用すれば心配はいらないと言われています。
こちらも過剰摂取における症状なのですが、マカを1日に5g以上摂取すると下痢になるという研究結果があるようです。
過剰摂取により便の水分量の調節に関係するホルモンの働きが過剰に抑制され、必要以上に便の水分量が増えているので下痢になると言われています。こちらも、サプリメントなどの用法用量を守って、正しく服用すれば心配はいらないようです。
マカを摂取することによって、男性ホルモンの分泌が促されると言われています。その結果、ニキビが出る場合があります。
しかし一方で、マカを飲んでからニキビが減ったという声も多いようです。
マカにはホルモンの分泌を促したり、バランスを整える効果があり頭痛や不眠解消効果があると言われています。
しかし、人によってはバランスが崩れる方向に作用することがあり、逆に頭痛や不眠を発症する場合があると言われています。このような症状が出た場合は、摂取を控えた方がよいでしょう。
他にも、妊娠中や甲状腺疾患を患っている場合、ホルモン分泌障害を患っていたり別の薬を服用している場合も、マカの摂取は控えましょう。
もし、マカを併用する場合は、必ず医師に相談するようにしましょう。
まとめ
過酷な環境で育ち古くから重宝されてきたマカは、多くの栄養素がバランスよく豊富に含まれているため身体にとって非常に良い影響を与えると言われています。
しかし人には、体質や体調などそれぞれ個人差があります。
それらを考慮しつつ、健康的な身体に近づけるために、上手に利用するようにしましょう。