男性の皆さん。オナニーやセックスで自分の男性器から出る精液について考えたことはありますか?
結婚をし、子供を作るという時には、妊娠という工程が必要になります。そして妊娠は女性の卵子と男性の精子が合体、つまり受精し着床することによって起きます。学校の保健体育の授業で習いますね。
ですがこの工程がうまくいかず、子作りしても妊娠しない、または、しにくい事があります。これを不妊症といいます。これは夫婦にとって大きな問題となります。これもご存知だと思います。
しかし不妊は女性だけが原因ではなく、男性側が原因の場合があることはご存知でしょうか。不妊の原因が男性側にある場合、これを男性不妊といいます。ここでは男性不妊の原因である、精液の質や量についてのお話です。
スポンサーリンク
精液とは?
そもそも精液とは何でしょうか?例えばオナニーやセックスをした時に男性器から出る白い液体、これを精子という場合がありますが、この表現は正確ではありません。正確には精液といいます。
精液は、液体成分の「精漿(せいしょう)」と細胞成分「精子」とで構成されます。精液の、約3割程が前立腺の分泌液(前立腺液)で、残りの7割程度が精嚢(せいのう)からの分泌液(精嚢分泌液)であり、これらの合わさったもの(精漿)の中に精子が混ざっています。
人間の精液は、射精の直後は濁った白色、または黄白色の粘り気のある液体ですが、10分ぐらいするとほぼ透明のさらっとした液体に変化します。
においは栗の花のような、塩素系漂白剤やさらし粉などのようと形容されたり、新鮮なイカのように生臭いにおいや単にイカ臭いとされることもあります。
1回の射精での精液の量は個人差が大きく、また同じ人でも前回の射精からの経過時間や体調、ホルモン状態によって左右されますが、数ミリリットル程が一般的です。(WHOの基準では2ml/回)
短時間のうちに3~4回射精するなど、連続で頻繁に射精すれば一時的に精嚢がほぼ空になることはありますが、常に精子が作られ補充されていくので、人間の副睾丸(精巣上体)は空の状態からでも3日間で満たされます。満タンになっても精子は常に作り続けられ、古い精子は分解されて体内に吸収されます。
ですので俗に、男性は満タンになっても常に精子が作られ続けるから、過剰な精子を捨てるために定期的に射精しなければいけない、と言いますがこれは間違いです。
男性不妊、精子の質と量
男性不妊の原因は、精液に異常がある場合(主に乏精子症)が大体8割を占めているといわれています。
精液に異常があっても精液の見た目は普通で、また痛みなどの症状もないため気づきにくく、奥さんが産婦人科を受診して異常がない場合に検査をしてみて初めて判明するという場合が多いようです。精液の異常とはいいますが、妊娠において重要なのは精子であるため、正確には精子の異常です。
精子の質とは精子の運動率やDNAの損傷度合いのことをいいます。つまり、健康で元気のいい精子が質の良い精子ということになります。
精子運動率が50%未満、または高速に直進する精子の率が25%未満の場合、「精子無力症」といい不妊の原因の一つと言われています。
一方、精子の量とは、単純に精液に含まれる精子の数のことをいいます。男性の正常な精液には1ccに2000万~1億の精子がいるといわれています。
1回の射精で出る精液の量は、約2cc以上になるので、その中には4000万~2億の精子がいることになります。これが、1mlの中に2000万匹以下の場合は「乏精子症」といわれ、男性不妊の原因と考えられています。
ちなみに精液の見た目が普通だからといって、精子が含まれているというわけではありません。無精子症や、パイプカットという精子を運ぶ管を手術で切断してしまった場合でも、精子は全くいなくても精液の見た目は普通になります。
精子が精液の中にどれくらいいるのかというのは、病院で検査をしてみないと分りません。
参考までに、WHO(世界保健機関)による精液の正常値は
- 精液量 2.0ml以上
- 総精子数 40.0×10の6乗以上
- 精子濃度 20.0×10の6乗/ml以上
- 運動率 50%以上(高速に前進する精子 25%以上)
- 正常形態率 15%以上
- 精子生存率 75%以上
- 白血球数1×10の6乗/ml以上
とされています。
質や量の改善には
精子の量や質が低下すると男性不妊の原因になりますが、では量や質を向上させるにはどうすればよいのでしょうか?
射精頻度
精子は約80日間細胞分裂を繰り返しながら作り出されるため、毎日何回も射精していると精子の数は減少します。ですが精液や精子は常に作られ続けており、また1回射精しただけで体内の全ての分が出てしまうわけではないので、無くなりはしません。
逆に、長期間射精しなければ、体内に貯めておける量いっぱいまで貯まります。いっぱいになっても精子は作られますが、射精されなかった精子は体内に吸収されます。しかし禁欲などで精子を溜め込むと、精子の質(運動率)が低下してしまうといわれています。
最近の研究では、射精の頻度が増すと精子の質が良くなるという結果が出ています。
オーストラリアでの不妊治療の研究結果によると、精子のDNAの損傷が正常レベルよりも大きい男性118人に対して、7日間毎日射精をしてもらい精子の質の変化を比較したところ、8割の男性が精子の質が良くなっており、DNA損傷率も34%から26%に下がったそうです。
この研究を行なった医師は、「毎日の射精で多少精子の量が減ったとしても、精子の質を高めて運動率を良くすることで妊娠力がアップする」と語ったそうです。
不妊治療で体外受精を行なう際にも、精子の運動率は大きく関わっています。
禁欲期間ごとの人工授精での妊娠率
- 禁欲期間3日以下 妊娠率平均14%
- 禁欲期間4日から10日 妊娠率平均10%
- 禁欲期間10日から30日 妊娠率平均3%
この調査で最も妊娠率が高かったのは禁欲1日で19%となっています。
数が少なくても質の良い精子がいれば受精できますし、逆に数が多くても質の悪い精子だと受精しにくいだけでなく染色体異常などの子供が生まれたり、流産したりといったリスクが大きくなります。
つまり、
射精頻度が高い→精子の質(運動率やDNA損傷率)は良くなるが数は減る
射精頻度が低い→精子の数は増えるが質は低下する
ということです。
ですのでもし妊娠を希望するのであれば、頻繁にセックスするのが良いということになります。もしセックスできなくても、オナニーなどで射精はしたほうが良いといわれています。
【参考資料】
☆精子はためた方がよい?(生殖医療専門医のブログ)
セックスの回数と『精子の運動率』(鍼灸治療院ヒノヘルスオフィス院長日野勝俊先生による、自らの男性不妊克服の経験を生かした不妊セミナー)
ただしこれはあくまでも一般的にというだけです。この通りにしなくても妊娠するときはしますし、体調など様々な要因がありますので、もし病院などで不妊治療を受けていて、医師の指示がある場合にはそれに従ったほうが良いです。
栄養素
精子の質や量にとって、健康はとても大切な問題です。偏った栄養摂取などは、肥満や糖尿病などの生活習慣病を招きます。
生活習慣病は精子に悪影響を与えるだけでなく、精力自体の減退も招きます。ですのでバランスの良い栄養摂取を心がける必要がありますが、その中でも特に精子にとって良いとされる栄養素をご紹介します。
- 亜鉛
- アルギニン
- リコピン
- ビタミンE
亜鉛は「セックスミネラル」と言われるほど性機能にとって大切な栄養素です。精子の数や精子量を増やし運動率を向上するといわれています。
この亜鉛が不足すると精子の数が減り、運動率が低下した弱った精子などが増加するといわれます。また男性ホルモンの生産にも関わっており、亜鉛の不足は勃起力の低下、精力の減退、性欲低下などの症状を招くといわれます。
【亜鉛の多く含まれる食品】
牡蠣、パルメザンチーズ、煮干、ピュアココア、松の実、ゴマ、するめ、カシューナッツなど
※亜鉛について詳しくは亜鉛についての記事に記載しています。
アルギニンには、精子の量を増やして運動率を高めることに効果があるといわれています。また、男性ホルモンの分泌を促進したり、血流改善などの効果も期待できるため、ED(勃起不全)の改善も期待できるといわれています。
【アルギニンの多く含まれる食品】
鶏肉、かつお節、乾燥高野豆腐、マグロ、海老、大豆製品、アーモンドやゴマなどのナッツ類など
リコピンは抗酸化作用が強く、活性酸素に弱い精子を守る働きがあるとされています。2013年に発表された米国の論文で、トマトに多いリコピンの摂取量の増加と共に正常な形状の精子が増加したという結果が出ています。
【リコピンの多く含まれる食品】
トマト、ミニトマト、スイカ、グァバ、ピンクグレープフルーツ、杏子など
ビタミンEは、精子の数を増やし精子の運動量を上昇させ、受精の確率を高めるとも言われているビタミンです。実験においても、男性にビタミンEを毎日200mgずつ投与すると精子の数が4ヵ月後から増えはじめ、10ヵ月後には10倍近くになったとの結果があります。
【ビタミンEの多く含まれる食品】
ウナギ、ニジマス、アユ、ハマチ、カボチャ、モロヘイヤ、菜の花、アーモンド、ヘーゼルナッツ、小麦胚芽、卵など
生活習慣
こちらは生活習慣です。悪い生活習慣は精子のみならず、健康自体に悪影響を及ぼします。ここではその悪影響を及ぼす習慣をご紹介します。
- 飲酒(アルコール)
- 喫煙(タバコ)
- 熱
- 自転車
アルコールには精巣での精子の生成能力を弱めてしまう働きがあります。また、アルコールの分解において亜鉛を含む様々な栄養素を消費してしまうため、栄養不足に陥り、精力の減退を招いてしまいます。アルコールの過剰摂取によって精子の質が低下している場合、禁酒後3ヶ月で元に戻るということが判明しています。
喫煙を行っていると、行っていない人に比べて精子の運動率や数が減少する傾向があることが分っています。また、妊娠率の低下や初期流産のリスクが77%も増加します。
さらに、血流の悪化によってEDの危険性が増大します。喫煙期間や本数にもよりますが、禁煙後3ヶ月である程度改善されることが分っています。
陰嚢、精巣は高温になるとその能力が低下してしまいます。温度が1℃上昇するだけで、健康な精子の生産量が最大40%減少するとも言われています。長風呂や熱い風呂、サウナへの長時間滞在には気をつけましょう。
自転車でのサイクリングやバイクなどに長時間座っていると、陰嚢、精巣の温度が上がり、精子の生成に悪影響を及ぼす可能性があります。研究によると、一週間に5時間以上のスポーツサイクリングを行うと、精子濃度、運動率の減少や低下のリスクが2倍弱になるといわれています。これらはやめる事で元に戻るといわれています。
上でも述べましたが、これらは精子だけではなく健康にとっても良くないものもあります。やめる事がなかなか難しいものもありますが、出来ることなら是非やめることをオススメします。
なお、生活習慣については精力減退と生活習慣のお話 ~いい習慣と悪い習慣~の記事で詳しく記載しています。
まとめ
当サイトでは精力の増進をテーマにしています。精力の回復、増進は結局のところ行き着く先はセックスです。セックスはもちろん、彼女や奥さんといったパートナーとのコミュニケーションという意味も大きいですが、結婚をして子供を作る際にも非常に重要なものです。子供を作る際に不妊というのは非常に大きな問題です。ですので、普段から男性不妊の予防には気をつけていきたいものです。